豪士山~ 置賜駒ヶ岳 (1995.03.18~19)

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CONTAX TVS , Kodak400
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「お~い みとべぇ、これを独りで帰れるかぁ~???」
・・・ と リッジの上で大声で尋ねると、、、

「む、無理っすよ~」
・・・ との返事、さらに

「リッジを下るのはおっかねぇ~」
・・・ とも言ってきた。

三戸部君の顔はスノーリッジを目前にしてかなり硬直していた。しんがりを嶋津が固めるので 続く二番手は三戸部君だ。彼は必死の形相のようだ。騙されたとでも思っているのか知らんが さぞかし俺を恨んだろう。 う~むぅ・・・ここは思案のしどころだ。 細い雪庇から岩コブへ、さらに吊り尾根上にリッジが連なって 最後は雪壁が構えていて 豪士峠に抜けている。

もともと夏道は右手の急斜面にジグザグに付けられているのだが そっちを登るなら雪崩の危険性を考え 登る時間帯が問題となる。ずっと手前の露岩帯辺りから尾根通しに進んで来ると 必ず此のリッジに至る。計画では彼に此処を独りで帰って貰うことになっており 自分たちは栗子への縦走を継続する計画だった。またしても縦走は叶わずだが、新人の彼を放っておくわけにもいかないので思案のしどころとなったのである。もしも独りで帰るというなら 25mのフィックスロープをセットしておく予定だった。
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三戸部くんである



仙台から二時間半で「まほろばの里」高畠町につく。上和田の集落への一本道を訪ねると 一昨年同様、各軒先は冬囲いに包まれている。雪は春の彼岸だというのに50cmは優にある。砂川砂防ダム下に車を停めて歩き始めた。林道途中に本宮作業小屋があり中ノ沢登山口と標識がある。奥の尾根がまっすぐ林道に向って落ち込んでいるが それが豪士峠への登山口。立派な標識がたてられている。

花ノ沢の渡渉から始まる。前日の大雨で簡単には渡れそうもないが エイヤッ!と大声をあげて飛び越えた。80リットルのザックを背負ったままだから三歩目は対岸に届かなかった。手始めは地形図の破線との違いがあるところで ここは尾根通しに急登した。c649mの第1ピークまでがかなりきつい。岩肌の出始めた露岩帯の雪庇を通過すると 春とはいえ冬の名残の山へといざなわれる。752mの第2ピークまではヒメコマツ、赤松とブナが混成するルート。途中、雪に覆われた夏道が尾根の右へと緩いルートで逸れていくが、この誘惑に負けそうになるほど我々の行く手にはスカスカと足元の抜ける斜面が待っている。ここは稜線に出るまで辛抱、尾根上を行かねばならぬところだ。やがて 豪士峠の終了点であるc980mのコブを中央とするスノーリッジの吊り尾根となる。

そこで先程の思案のしどころとなったのである。山に逃げられたことはないが 体力や世事のせわしさが山を逃がしている今日このごろ、、、縦走をあきらめるのは残念至極であるが、私の選定した地味な山の地味なルートにつき合ってくれた若い三戸部君を突き放せる状況にはなかったのである・・・明日は駒ヶ岳経由で下山するしかないだろう。

先ずは ピッケル一本でのトラバースを 手本として何食わぬ顔でやってのける。渡りきって余裕のドヤ顔で振り返ったであろう先行者を 彼は憎んだに違いない。コブからたかだか10メートルを数十歩を掛けてジワリジワリ進んで来る。俺が高みの見物するとでも思ったのだろう、睨みつけた形相が段々とコチラに近づいてきた。まあそれでも ようやく辿り着いた。 

終わってしまえば何のことはない 意味なく互いに高笑いするばかり。緊張から解放された三戸部君の大笑いには いっぱしの山男の貫禄が漂っていた。最後の雪壁を抜けると霧氷のビッシリついたブッシュの向こうには 急ぐ我々をはだかるものは何もなかった。
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無事リッジを終えて談笑する嶋津と三戸部くん テン場はすぐそこにある




豪士峠は平らかな神々の祭り場のごとく「唯ただの雪原」で我々を迎えてくれた。ゆったりと豪士山に向って盛り上げていた。旧峠沿いに目を向ければ 茂庭側に向ってこんもりとした尾根が続いている。北には龍ヶ岳への稜線が続き 峠田山にあるスキー場も霞んで見えている。豪士山頂より まん前の七ッ森を眺めたが、宮城の大東岳の山容に似た台形をデンと据えていた。

豪士山の肩にある「白いサンゴ」を見ながら ブナ林の端にツェルトを張った。夕暮れにつれてツェルトの表面をカサカサと音を立てるものが降りて来ていた。その夜は 酒好きが三人も揃ったので 珍しく長い酒盛りに。それでも 疲れた体は正直なもので9時には就寝となる。

朝5時、静かな 少し靄がかった朝を迎えた。 残月が駒ヶ岳の肩に白々としている。広陵とした静かな雪原がかよわな朝陽のピンクにじわーっと染まってゆく。それを瞬きもせずにじっと見ている我々がいる。神々が棲むという数万尺の厳峰に比するものは何もないが 粛々とたたずむ白い平原に対峙する時 まさに実存を感ずる。「時」は己の内に打ち続けていく。ここぞというピンクが展開され それが無色の光に解けるまでカメラを凍らせた。

主稜上の1074m三角点から駒ヶ岳を経由してダイレクトに下山するのが今日の予定だ。882mのコルまで左の雪庇に注意しながら高畠町最高点1074m峰を目指す。コルの雪原から974mまでがきつく寝起きの身体は汗を出し続ける。晴天となった10時近く 突然バラバラバラバラと防寒着に降りかかるものがある。一斉にブナの小枝から霧氷の花が散りだしていた。稜線上が白く煙るほどで しばし異空間に漂った。

豪士山から2時間である。栗子山 七ッ森へのルートを目で追い チョッピリ悔しいが若い相棒に気付かれぬようにした。駒ヶ岳へは主稜から分かれ 20分後に着いた。遥か彼方に月山がぼーっと白く浮き出ていた。下山ルートをしっかり頭に叩き込んで 春山と化した下降路を最下段のc570 へと下った。途中 c700付近で 右へ尾根が分岐するが その尾根を登路に使ったと思われる赤テープが風に靡いていた。

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 こまがたけ



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Commented by KS at 2014-02-07 22:56 x
思い出しますな~。 リーダーの苦労も当時は理解できていませんでしたが、ついて行けたのは貴兄のおかげ。
といって、酒はおごりませんが・・・
Commented by tabi-syashin at 2014-02-07 23:27
すこし 現像に失敗しました。古いフィルムなので勘弁してけらい。
酒はいつでも歓迎ですぞ。特に坂下なら文句無しですらい。
by tabi-syashin | 2014-02-07 18:24 | Mount Kuriko | Trackback | Comments(2)