黄色い紀行文  奥只見村杉半島②

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当時45歳 バドの缶ビール、行動食のオレンジ、マーラーカオ(蒸パン)などが定番だった。靴はコフラック製プラブーツ。まだ壊れないw 防寒着はカモシカスポーツ製ゴアテックス。この防寒着は特に吹雪の際に顔がスッポリと覆い隠せる。さすがヘリテイジ製品。山を知り尽くしているからこそのデザインだ。スタンダード製トランシーバーは旧くて大きいが感度抜群だ。 


5月4日 
テントサイトはガッチガチに凍って アイゼン無しでおちおち小便もできんような朝を迎える。出立準備をしていると浪漫パーティが急斜面を避けて雪庇の頭を縫いながら追いついてきた。ともにっ猿倉山(ベイクラヤマ)を目指す。

アイゼンを利かしてズタズタの雪面を進めば 難なく猿倉山の窪地に辿れた。今朝もいい天気だ。郡山のパーティが撤収した幕場で振り返り横山を見る。確かに落ち込みは深く激しく昨日に霧の中に採ったルートは見事な斜面にあったと思われた。

猿倉の西峰は尖がったクリスマスの三角帽子のようだった。東峰は分度器のような椀型をしていた。が、実際に登ってみるととんでもないスパッと切れた崖をその南面に持っていた。下降ルートが分からずに東方に登ってしまった我々はミスに気がついたが 南面を観れて儲けたという感じだった。先行する郡山のコールが聞こえる。ここからの下降路は何処をどう辿ればいいか?自分だけが知っていた。

後ろ向きになって藪をつかみながらどんどん西側寄りに下降するのだが どんどんと雪を拾いながら下降するにつれ藪が濃密になってゆく。藪 藪 藪の連続だ。左の崖がある地点を過ぎると大川猿倉(オオカワベイクラ)に着く。

身体はガタガタ 筋肉はパンパン 4坪ほどの山頂からは 太郎助山を右に控えて 天に向かって切っ先を突きだす百字ヶ岳、中岳、毛猛岳のビンビンに尖った三兄弟の鋭鋒群が眺められた。 それはここから間近にあった。この角度でないとお目にかかれないものだった。

今日は三羽折の高手(サンバオリノタカテ)まで駒を進めなければならないが 雪を被った村杉岳の稜線上を目で追えば唯々藪尾根が控えていた。所々に雪が拾えそうだが・・・、西側の雪を拾って藪のピーク、さらに雪を拾って次のピークを巻き 最後に西の雪を拾って村杉岳への分岐点手前のピーク(コンター1354)に至る。

暑さとともに少しバテテしまった。亀が硝子板の上を進むがごとく思いっきり首を甲羅から引っ張り伸ばして進もうとするのだが なかなか進まない感じw 鉄人の別称を保つ今出さんのステップに合わずに苦労する。佐野さんも苦労していた ガーッと登ってはゼイゼイを繰り返していた。

コンター1509分岐点でオレンジを分けた。初夏の風に乗って丸山スキー場からスピーカー音が聞こえてくる。さて先刻とは打って変わって信じがたいほどの雪量の村杉岳に満足しながら 今日のテントサイトにコンター1395に向かった。

私はバテ気味で食欲が細く ビールに野菜サラダ キャベツとベーコンのポトフを2杯戴き 日本酒を済ませた。アルコールが入れば徐々に食欲も回復してきた。今夜も無事に過ごせそうだ。明日は丸山岳まで突っ込むことを浪漫パーティに交信で伝えていた。

菅井パーティは白戸川を越える地点、高幽山にいるのは田中パーティで無線の可憐な「ど~ぞ」が聞き取れた。高桑パーティは既に会津朝日の避難小屋にいるようだ。 

郡山の渡辺パーティーは村杉半島を降りて大鳥ダムにテントを張り 翌日の大鳥岳~毛猛山を目指すようだ。


記録は さらに3日目以降へとドラマチックに続くわけだが・・・w

ボートをチャーターして村杉岳にとりついて 雪のたっぷり残る只見の山域にこうも遊べたことを強く心に遺し、また凄く感謝している。 「山脈を辿れば人脈に通ず」 この言葉通りに 自分は当会を通じ色んな方々と面識を持つことができ、心も繋げることができた。 

お陰でこの最高に楽しい山行も組むことができた。実現不可能と思い込んで黄色に褪せるまで紀行文のコピーは心にそっと温めていたままだったが、その計画発案の素を大切な仲間が拾い出してくれた。

さらに浦和浪漫や郡山労山などとのお付き合いの中で同じ志向の方々と同じ山域に遊ぶことができた。そのことには心の底から感謝している。こんな山遊びが かつての山岳会にはあったのだ。一人じゃできないけれど組織としてならどんな困難もやりこなすことができる。それが組織、山岳会だ。

なんと素晴らしいことか・・・なんと僕は幸せ者であろうか。

                                 1995年山行記録より
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村杉岳から猿倉山を俯瞰する。その右奥に鬼ヶ面と浅草岳 中奥に守門岳 左手に毛猛山 鬼ヶ面の手前に前毛猛。

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テン場にて
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Commented by KS at 2013-11-16 18:36 x
懐かしいね、スタンダードのシーバは会社の同期から借り物ですが、彼も病を得て不帰の人になってしまった。
毛猛も御神楽も貴重な映像です。渡辺君は人間として尊敬できる岳人でした。彼との山行暦は宝です。
Commented by tabi-syashin at 2013-11-16 20:34
そうだったんですか・・・知らなかったなぁ
あれからずっと 山行にお供してましたが(?)
いかんせん 載せられない記事 写真があったら
ゆってくらんしょよ。
by tabi-syashin | 2013-10-30 15:09 | Mount M aizu | Trackback | Comments(2)